僕の好きなおじさん

僕の好きなおじさん。
毎週、何かしらのメンズファッション誌に登場するおじさん。

東京の老舗セレクトショップ"原宿キャシディ"の八木沢博幸さん。
日本で"プレッピースタイル"というアイビールックやブレザーを少し着崩したファッションを広めた方です。
"ミスタープレップ"という異名を持つ、ファッション界の重鎮。

プレッピースタイルって、ざっくり言うと、アメリカの名門大学に入るための予備校であるプレップスクールに通うお金持ちのボンボンがしていた、ブレザーのネクタイを緩めたりラフに着たりする服装なのですが、
もう還暦を過ぎた八木沢さんの異名がミスタープレップって、とても愛らしいなと思います。
永遠の予備校生、永遠の若々しさというか。


永遠の予備校生といえば、キテレツ大百科の"勉三さん"を思い出します。
都内で6浪、自家用車まで持つ勉三さん。
きっとアメリカのプレップスクールに通う若者と同じくらいご実家は裕福なのでしょう。豪農でしょうかね。
勉三さんも"ミスタープレップ"の資格はありそうですが、彼はいつも詰襟なのでちょっと。


もう何年も前ですが、所用で東京へ行った際にどうしても八木沢さんに会ってみたくて原宿へ行きました。
雑誌で見るよりずっと大柄。雑誌で見るとおりの猫背とメガネのズレ具合。
ファンであることを伝え、一緒に写真を撮ってほしいとお願いすると、ボソボソと消え入るような声で、
「僕なんかでいいのかな…」と仰りながら快諾してくださいました。
ふんぞり返ってもいいくらいの、まさに重鎮なのですが、僕のような一見の若造にも腰の低い丁寧な接客。

まさに「実るほど 頭を垂れる 稲穂かな」を体現なさる方だと思いましたし、
手本とすべきはこの方の服装ではなく姿勢だなと、心から感じました。


先日、当店のInstagramで紹介した雑誌POPEYEの「僕の好きな映画」。
この雑誌にも八木沢さんは登場します。
素敵だなと思ったのは、八木沢さんが「映画の雑誌なのに服の話しかしていない」こと。
ご自身の好きな映画の登場人物がどんな服装をしていたか。それだけ。
専門外のことは話さないし、その上でご自身の専門分野に引きずり込む。
雑誌の中で、芸能人や文化人と呼ばれる人々は賢しげに得意げに映画を評しているのに。
さすが八木沢さんだと感心しつつも、得意げに映画を語る文化人よろしく、毎夜Instagramで手当たり次第何かを語る自分をふと思い返し、苦笑してしまいました。


当店にある雑誌にも、たくさんの八木沢さんが掲載されています。
そのうちの一つの記事を写真に撮って、はたと思いました。
著作権、肖像権の侵害ですね。
表紙なら大目に見てもらえると思いますが、記事はマズい。
僕、これまで何回か撮って載せてるんで今さら何言ってるんだって感じですが。気をつけます。
僕もされて嫌な思いをしたことがあるし。

ということで、僕が5分で描いた八木沢さんでもご覧ください。
あと、勝手に原宿キャシディのタグを付けておきます。


"一冊まるごと八木沢博幸"みたいな雑誌、出ないかな。三冊買うけどな。
マガジンハウスさん、枻出版社さん、いかがですか。

タテイト珈琲店

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