寡黙にして雄弁
秋の風。金風と呼ぶには少し気が早いのかもしれません。
高校野球、甲子園。
日本の夏の、決して色褪せないキラーコンテンツ。
夏の甲子園を観ていると、スポーツの面白さというのは技量の有無とは無関係だな、と思います。
この季節、読みたくなるのはあだち充。
僕はタッチ世代ではなく、H2世代です。
野球マンガというよりは、野球を通して人間模様を描いた作品という趣向でしょうか。
読み手に解釈を委ねるセリフ回し、そのヒントは背景画やコマの割り方。
まさに「行間を読む」という作業です。
ときに読者を突き放すように置いてけぼりにしてしまう。
それだけに、作品の機微にうまく触れることができると心地よい。
マンガ大国・日本。
数多くのMANGAが、様々な言語で世界中で親しまれていますが、
あだち充の作品はとにかく翻訳家泣かせだという話を聞いたことがあります。
ダイナミックな描写も、派手な演出もない。
タッチの「和也の死」というショッキングで大きなストーリー展開ですら、どこか緩衝材を入れられたかのように、淡々と。
だからこそ記憶に残る名シーンなのかもしれません。
キャラクターの表情の濃淡は小さいのに、心情はまさに七変化。
翻訳するには材料が少なすぎる。そういうことでしょうか。
寡黙にして雄弁。
あだち充の職人技。
そんなコーヒーを淹れてみたい。
でも、僕はいつも雄弁でいたい。
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