楽毅とプリン

秋の肌寒い雨。
これが春なら、春の暖かい雨だと感じるのかもしれない。
春と秋。同じような気温でも、辿ってきた季節が違えば感じ方も変わりますね。


当店の「荒々しい(ときに優しい)プリン」。
僕にとっては望外の人気メニューです。
こんなに皆さまにお求めいただけると思っていませんでした。
ありがとうございます。

元々、見た目が荒々しいというものではなく、荒々しく食べて欲しいという意味で作ったもの。
ただ、たまに「え、全然荒々しくない…」と言われてしまうので、見た目の荒々しさも少々意識して。
でも最近は少しやさしさの方が滲み出ています。


荒々しいといえば、「楽毅」。
少し強引に話を持っていきますよ。
紀元前の中国、春秋戦国時代、主に燕という国で活躍した武将です。
秦の始皇帝より50年ほど前の人物だったかと。


昨今、この春秋戦国時代が非常に人気ですね。
ひとえに、大人気漫画「キングダム」の影響でしょうか。


僕が以前、漫画「蒼天航路」を読んで三国志に興味を持ったり、
僕より上の世代に、横山光輝の漫画「三国志」をきっかけとしてその世界にのめり込んだ方々がいるのと同じように、
「キングダム」が若い人たちにとっての春秋戦国時代への扉になっているのかもしれません。

春秋戦国時代、面白いですよ。
故事成語の多くがこの時代の出来事を元に成立しています。
楽毅も、有名な「隗より始めよ」という故事成語に関係します。
趙の藺相如なんて、「いくつ故事成語作ってんねん」というくらい頻出します。
故事成語製造機です。


当店には「楽毅」をはじめ、宮城谷昌光が著した春秋戦国時代を題材とした小説がいくつかあります。
小説そのものの面白さは賛否両論の宮城谷昌光ですが、
「司馬遼太郎が新作の題材・資料集めのために古書店街を巡ると、すでに宮城谷昌光が根こそぎ持って行ってしまった後だった」
というエピソードがあるほど、徹底的に考証を重ねる小説家。
あくまで小説としての面白さは別として、本当に面白い面白くないは一旦置いておいて、とても勉強になった気になれます。
なんだか、苦行がじわじわ気持ちよくなっていくような感覚。

しおり持参で荒々しい(ときに優しい)プリンを召し上がりながら、是非どうぞ。