気概

今週も無事、タテイト珈琲店の営業が終わりました。
皆さま、ご来店ありがとうございました。
楽しいお話をたくさんお持ちいただき、お腹いっぱい胸いっぱい。


何度も繰り返し読んだ本というのは、ほんの数冊。
江上波夫の「騎馬民族国家」は、そのうちの一冊です。

匈奴や月氏・扶余といった古代騎馬民族の習俗と、古代日本の習俗や古事記などに記された出来事との比較から提唱された、「騎馬民族征服王朝説」。
比較文化論的アプローチです。
平たく言えば、
「大和朝廷とは、北方大陸系騎馬民族が日本列島を徐々に征服した末に建てたものである」という説です。確か。


もう50年も前に提唱された説。
当時は熱狂をもって歓迎された説で、手塚治虫の「火の鳥」にも影響を与えています。
ただ、現在ではこの説を支持する学者は皆無に等しいそうです。

DNA的にも文化論的にも、「まぁ無いでしょ」という扱い。半分オカルト。
日ユ同祖論よりはマシという程度。


でも、「正解か、そうでないか」ということは、あまり問題ではない気がします。

本を読んでも、著者自身「これ違うよな〜無理やりだよな〜」と思っていそうな節すらあります。
ただ、「新しいアプローチで学問の世界に喝を入れてやる!風穴を開けてやる!」という挑戦的な行動だったのではと僕は思います。
お前ら、あぐらかいてないでもっと色々考えよーぜ、みたいな。
著者の燃えるような気概が見える気がして、何度も読んでしまいます。


初めて何かをした人は偉い。
心底、そう思います。

たとえば、今まで誰も食べなかったものを初めて食べ、それを「食べられるもの」だと明らかにした人は英雄でしょう。
一つ、食糧を確保できたわけですから。
僕は初見でウニも貝もシャコも食べたくありません。
フグや毒キノコに初めて挑んだ勇者は、残念でした。


コーヒーにしても、収穫して乾かしたり発酵させたりジャコウネコに食わせて排便させたり、
それを焙煎して挽いてドリップしたりあの手この手で…。
まぁあんな酸っぱいコーヒーチェリーをどうにかしてやろうと頑張った最初の人には感服します。


学問も食べ物も、犠牲と礎あってのもの。
尊き御柱です。


それにしても、「本」縛りで一週間ポストしてみましたが、苦痛でした。
勝手にやっといて何言ってんだ、頼んでねーよって声が聴こえてきそうです。
テーマを絞っちゃうと、思考が伸びやかになりません。
ひとつ学びました。
来週からはまた、気分次第でつらつらと。


それでは来週月曜日、秋分の日の振替休日から、13:00〜22:00の間、皆さまのご来店をお待ちしております。

タテイト珈琲店

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