屍まで

木々の衣はひらりと剥がれ落ち、人の衣服は分厚くなる。空気が締まる。

今朝方の雨は、紅葉を道連れに。


タテイト珈琲店のオープン時に、友人からお祝いでいただいた植物に元気がありません。
草花には本当に疎く、この植物が冬を越せるものなのか、写真に映る芽のようなものから何かが生まれるのか、皆目分かりません。

水を与え過ぎたのかもしれないし、水やりが不足していたのかもしれない。
葉が黄色くなり、ずいぶん切ったせいで今ではスカスカです。
終いまでしっかり世話をしたいと思いますが、冬は越せないような気がします。でも、そうなってもまだ役目がきっとある。


タテイト珈琲店までは自転車通勤。
通勤路はその日の気分で変えていますが、最近お気に入りの道ができました。
とある企業の古い社宅が並ぶ、静かな道。
先日、その道の両脇が落葉で一杯でした。
黒々とした土の上に、溶け出しそうな色鮮やかな落葉。
しばらく経つと、腐葉土になるのでしょう。
ふと感じる自然の循環。来年の生命を繋ぐために。
冬に向かうにつれて生命の弱まりのようなものを感じますが、生命を溜め込む季節なのかもしれない。


ただ、友人にもらった植物は、次の季節に繋ぐことなく生命としての役割を終えるのでしょう。
でも、荒涼とした野に立つエゾシカの角のような、この雄々しい幹と枝。
きっとこれからも、何らかの形で当店を立派に飾ってくれると思います。

こっそり小声で「枯れてもずっと一緒やで〜」とつぶやきながら手入れをしていると、残った葉たちが心なしかふっくらと立ち上がったような気がします。
元気でいてほしいという気持ちと、反面、骨身を晒した姿を早く見たいという思いと。
僕への同調か、それとも反抗か。
病めるときも、健やかなるときも。
そんな結婚式の決まり文句が頭に浮かぶ。