影法師

午前11時の影法師。
窓に書いた文字、窓辺に置いた物、やかんから立つ湯気。
全部ひっくるめて、壁に一枚。

小さい頃、自分の影がひどく怖かった記憶があります。
よく漫画であるように、影が勝手に動き出したらどうしようと。まさに杞憂。

でも、夕暮れ、遊んでいた友人と別れ一人帰路につく頃に見る自分の影には、どこか親しみを感じていたように思います。
とりあえず、一緒に家まで帰ってくれる。

長く伸びきった影。全てが茜色に染まる中、決して色を変えない影。

今、自分の影に何らかの表現を乗せるならば、
「頑固さの結晶」みたいなものでしょうか。
色は変わらない、自分から決して離れない。そんな性質。


自分が死ぬまで絶対に離れないと保証されているものは、影だけなのかなとふと思う。
それは寂しくもあり、嬉しくもあり。

タテイト珈琲店

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